ダークフレームについて
今回はダークフレームについてです。写真が多くて......テストが終わったら写真を張り付ける予定です。文字ばかりですみません。
まずダークフレームとは?
ダークフレームというのはカメラのアラ、つまりノイズだけを撮ったものです。ノイズという言葉がわかりづらければ雑音とでも呼べばよいでしょうか。周りの雑音が大きければ、聞きたい音楽がかき消されてしまうのと同じで写真もノイズという雑音が多いと写したい天体がノイズと区別がつかなくなってしまいます。そこでノイズだけを撮った写真を天体の写った画像から引き算すれば天体だけ出てくるということです。わかりづらければ↓の式をみるとよいと思います。
[天体とノイズ] - [ノイズ] = [天体]
では、ダークの撮り方は?
ノイズだけを写すためにはどうすればよいのでしょうか。簡単です。カメラにふたをして撮るだけです。
しかし、いろいろ事情がありまして、ただ撮るといってもいろいろ条件があります。
ダークを撮る条件
ダークというものにはランダムノイズというものとパターンノイズというものが含まれています。ランダムノイズはどこに現れるかわかりません。いつも気まぐれにポツポツ、ザラザラ出現します。パターンノイズというのは同じ条件下ならいつも同じ場所に出現します。
ダークフレームで解決できるのは後者のパターンノイズのみです。このパターンノイズは温度、感度、露光時間が同じならいつも同じ場所に現れます。だからバークフレームは温度、感度、露光時間さえそろえてふたをしてシャッターを切ればOKです。
注意
ダークを撮る条件として、温度、感度、露光時間を挙げました。でも注意が必要です。カメラには写真を保存するファイルの形式としてRAWやJPEGがあります。CCDカメラではFITSやTIFFもあります。一眼レフカメラでダークを撮る場合、RAWで撮る必要があります。JPEGでもいいんですが、JPEGはカメラの中のコンピュータがうまく編集してくれた画像のことですから、毎回毎回微妙に処理が違ったり、諧調が8bitだったり.......とても難しい理由でうまくダークを引いてくれません。なので一眼レフならRAWで天体を撮って、ダークもRAWで撮るのが好ましいです。
ランダムノイズは消えないの?
ダークフレームでは消えません。だってどこにどんなふうに現れるかわからないんですもの。それでもランダムノイズを低減する方法はあります。ランダムノイズを低減する方法は天体を何回も何回も同じ構図で何枚も撮って足し算して足した枚数で割ります。つまり平均です。天体はいつも同じ場所に写りますから平均しても明るさは変わりません。でもランダムノイズはフレームによって出方が変わりますから、平均した場合少なくなります。簡単に言うのであれば天体ははっきり写り、ノイズはボケて目立たなくなります。これがランダムノイズを低減する方法です。でもあくまで低減。なくなりはしません。ノイズが少ない状態で写真を撮るのが一番理想です。
では、ここからは失敗談です。
ダークを引いたら画像の左右の色が変わった。
パターンノイズを再現する方法は同じ温度というのが必須です。
ある日、撮影後カメラにふたをしてインターバルタイマーで何枚か撮って帰りました。翌日編集をするとカブリのように左右で色が変わってしまいました。
この症状の原因はダークを撮るときの温度にありました。
ちゃんと撮影後に撮影地で撮影中と同じ外気温でダークを撮りました。でもカメラにふたをしたときカメラのふたがある程度温度を持っていて、ふたの熱がCMOSに移ってしまいました。思い出せば、その日カメラのふたをポケットに入れていたような......私の体温でふたに熱を与え、そのふたがカメラに熱を伝えてしまっていたようです。ですから、その後はそんなことがないようにふたを撮影中は望遠鏡の下の道具箱周辺に置いておくようになりました。こうすればカメラのふたは外気温と同じ温度になりますし、カメラも野外で動いているので外気温と同じ温度になっています。これでダークがうまく撮れるようになりました。
ふたも外気温にならして撮影した成功例
ダークを引くと画像がザラザラになった。
これはよくあることなんですが、ダークの撮影枚数が少なかった時によく発生します。カメラのダークフレームにはパターンノイズのほかにランダムノイズも含まれています。ですからダークフレームにパターンノイズ以外のものが写っていると、それも一緒に天体の画像から引かれることになります。
[天体とパターンノイズと少ないランダムノイズ] - [パターンノイズと少ないランダムノイズ]
= [天体とパターンノイズと多いランダムノイズ]
なのでダークフレームも何枚か撮影して加算平均処理をしてランダムノイズを減らしています。
[天体とパターンノイズと少ないランダムノイズ] - [パターンノイズ]
= [天体とパターンノイズと少ないランダムノイズ]
ダークを引かないというのも策の一つです。冬場などもともとノイズが少ない条件や加えて露光時間が極端に短いという場合はパターンノイズは少ないです。ダークを引いてランダムノイズを我慢するのもアリですが、パターンノイズを我慢してランダムノイズを低減するというのもアリです。彗星など短時間連射時などこういう手を使います。
ほとんど違いがないように思えますが、強調処理を進めていくと僅かなざらつきが目立つようになってきます。
同じ条件で撮ったはずなのにダークが全部違う
これは夏場で多いです。カメラは撮影中と撮影直後にセンサーに電流が流れています。電流が流れるとわずかにジュール熱が発生します。電熱線のストーブがあったかいのと同じ理論です。ダークを連続で撮り続けるとセンサーが冷めることなく少しずつ熱を持ってきます。実験をしてみました。10分露光のダークを10枚撮ります。一方は連続でインターバル時間はわずか1秒。もう一方は30秒に設定しました。すると30秒の間隔を空けて撮影したほうは10枚全部が同じダークになって今したが、間隔が1秒のほうは最初から最後にかけてだんだんノイズが増えるという現象が起きました。間隔1秒の最初の一枚は間隔30秒とほとんど変わらなかったのですが、最後に撮影したほうは最初の何倍もの量の凄まじいノイズになっていました。冬場は間隔が短くても周りの気温が低いので影響がないのですが、夏はそういうわけにもいきませんでした。なのでこの経験の後からダークもライトフレームも30秒ほどインターバル時間をおくようになりました。
ノイズに変な光が写っている
単純なミスです。カメラののぞき口ファインダーから光が入ってセンサーに写ってしまったようです。撮影中はミラーが跳ね上がってファインダーをふさぐので光は入らないはずなんですが、それでもわずかに光が漏れてしまう隙間があるようです。その日は機材の片づけをしながらダークを撮っていました。懐中電灯で照らしたときファインダーに強い光が入ってしまったのだと思われます。でもあまりに強い光でない限りほとんど影響がないのであまり気にする必要はないかもしれません。加えてカメラは新しい機種がぞくぞく発売されていますが、技術も精度も日々進化しているので新しいカメラになればなるほど気にする必要はなくなると思われます。
ダークを引いてもノイズがたくさん残る。
総露光時間が長いと顕著にこの現象が現れます。撮影開始時は気温0度だったのに撮影終了時は氷点下10度だったということはよくあります気温が10度異なるとノイズの量は劇的に変化します。撮影終了後だけでなく、撮影中、とくに半分撮り終えた時点でもダークを撮るような対策が必要となってきます。一番簡単な方法は外気温がこれ以上は下らんだろうという時間まで機材をセッティングした状態で待機しておいて、気温が底をついたときに撮影を開始するという工夫もあります。ここぞという作品を撮りたいという日はこういう対策をしたりします。
失敗ばかりのきっしーです。些細な失敗も入れると書ききれません。ぼちぼち加えていきます。またノイズを減らす手段についての考察も後々防備録に加えたいと思います。